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はじめに

 平成14年7月12日法律第85号(建築基準法等の一部を改正する法律)により、建築基準法第28条の2として、「居室を有する建築物は、その居室内において政令で定める化学物質の発散による衛生上の支障がないよう、建築材料及び換気設備について政令で定める技術的基準に適合するものとしなければならない。」との条文が追加されました。
 また、平成14年12月26日には、政令第393号(建築基準法施行令の一部を改正する政令)により建築基準法施行令が改正されると共に、国土交通省告示第1113号、第1114号及び第1115号が公布されました。さらに平成15年4月1日には告示が改正されました
 これらの施行令及び告示では、建築基準法第28条の2の規定に基づき、シックハウス対策のための規制対象となる化学物質並びに建築材料及び換気設備に係る技術的基準が定められました。
 施行令では、告示で定められた内装材を居室に用いる場合、居室の種類、居室の換気条件及び内装材からのホルムアルデヒド発散速度に応じ、次の3つの基準が示されました。
(1)ホルムアルデヒドの発散速度≦0.005mg/m2
  内装に制限なく使用可
(2)0.005mg/m2h<ホルムアルデヒドの発散速度≦0.12mg/m2
  第2種又は第3種ホルムアルデヒド発散建築材料:内装の使用面積を制限
(3)0.12mg/m2h<ホルムアルデヒドの発散速度
  第1種ホルムアルデヒド発散建築材料:内装に使用禁止
 また、告示では建築用仕上塗材のうち、内装薄塗材E、内装厚塗材E、軽量塗材、複層塗材E及び防水形複層塗材Eの5種類においてユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、レゾルシノール樹脂又はホルムアルデヒド系防腐剤を使用したものが第1種ホルムアルデヒド発散建築材
料とされました。
 一方、JIS A 6909(建築用仕上塗材)は2003年3月20日に改正され、「内装用の仕上塗材には、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、レゾルシノール樹脂及びホルムアルデヒド系防腐剤のいずれをも使用してはならない。」との品質規定が追加され、包装・容器等にホルムアルデヒド放散等級としてF☆☆☆☆マークを表示することが義務付けられました。したがって、改正JIS(JIS A 6909-2003)に基づくJIS及びF☆☆☆☆マーク表示製品は、告示の第1種ホルムアルデヒド発散建築材料から除外されて、居室に制限なく使用できることとなります。
 その場合、JIS表示品以外の塗材にはF☆☆☆☆マークが表示できませんので、日本建築仕上材工業会では、「ユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、レゾルシノール樹脂及びホルムアルデヒド系防腐剤のいずれをも使用していないJIS A 6909表示品以外の塗材」を対象として、自主的にホルムアルデヒド放散等級F☆☆☆☆マークの表示を行う制度を発足し、ここにガイドラインを作成致しました。

平成15年4月1日  
日本建築仕上材工業会 
会長 岩崎 行男  



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1. 建築基準法関係シックハウス対策技術的基準の概要

 平成14年7月12日法律第85号(建築基準法等の一部を改正する法律)により建築基準法に第28条の2が追加され、平成15年7月1日から施行されます。
(居室内における化学物質の発散に対する衛生上の措置)
第二十八条の二 居室を有する建築物は、その居室内において政令で定める化学物質の発散による衛生上の支障がないよう、建築材料及び換気設備について政令で定める技術的基準に適合するものとしなければならない。
 これを受け、技術的基準として平成14年12月26日に政令第393号「建築基準法施行令の一部を改正する政令」が公布されると共に、国土交通省告示第1113号〜第1115号(平成15年4月1日改正)により、それぞれ第一種、第二種及び第三種のホルムアルデヒド発散建築材料が定められました。また、これらの関連として平成15年3月20日にはJIS A 6909(建築用仕上塗材)が改正されました。これらの主な内容は、以下のとおりです。


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1.1
建築基準法施行令関連
1) 規制対象物質(令第20条の4)
政令で定める化学物質は、クロルピリホス及びホルムアルデヒド。
2) クロルピリホスに関する建築材料の規制(令第20条の5第1項第1号及び第2号)
クロルピリホスを添加した建築材料の使用禁止。
ただし、クロルピリホスが添加された建築材料のうち、建築物の部分として5年以上使用したものは除外。(告示第1112号)
3) ホルムアルデヒドに関する建築材料及び換気設備の規制
(1) 内装の仕上げの制限〔令第20条の5(第1項第1号及び第2号以外)〕
-1- 建築材料の区分〔令第20条の5第1項第3号[第1種]、第4号[第2種、第3種]、第2項〜第4項

 [認定]、告示第1113号[第1種]、告示第1114号[第2種]、告示第1115号[第3種]〕

ホルムアルデヒドの発散速度(※1) 告示で定める建築材料 大臣認定を受けた建築 大臣認定を受けた建築
名称 規格との関連
0.005mg/m2h以下
JIS、JASで検討中の上位規格 第20条の5第4項の認定 制限なし
0.005mg/m2h超
0.02 mg/m
2h以下
第3種ホルムアルデヒド発散建築材料 JIS、JASの
E1、FC1
第20条の5第3項の認定(第3種ホルムアルデヒド発散建築材料とみなす) 使用面積を制限0.12 mg/m2h超
0.02 mg/m2h超 0.12 mg/m2h以下
第2種ホルムアルデヒド発散建築材料 JIS、JASの
E1、FC1
第20条の5第2項の認定(第2種ホルムアルデヒド発散建築材料とみなす)
0.12 mg/m2h超 第1種ホルムアルデヒド発散建築材料 JIS、JASの
E2、FC2無等級
使用禁止

※1 測定条件:温度28℃、相対湿度50%、ホルムアルデヒド濃度0.1mg/m3(=指針値)
※2 建築物の部分に使用して5年経過したものについては、制限なし。

-2- 第1種ホルムアルデヒド発散建築材料の使用禁止(令第20条の5第1項第3号)
第1種ホルムアルデヒド発散建築材料については、居室の内装の仕上げへの使用を禁止。
※「居室」には、常時開放された開口部を通じて居室と相互に通気が確保される廊下が含まれる。
※「内装」とは、壁、床及び天井(天井が無い場合は屋根)とこれらの開口部に設ける建具(戸等)の室内に面する部分であるが、回り縁、窓台等の部分を除く面的な部分を対象。
-3-
第2種・第3種ホルムアルデヒド発散建築材料の使用面積の制限(令第20条の5第1項第4号)
第2種ホルムアルデヒド発散建築材料及び第3種ホルムアルデヒド発散建築材料については、次の式を満たすように、居室の内装仕上げの使用面積を制限。
 N22+N33≦ A
  N2:次の表の(一)の欄の数値
  N3:次の表の(二)の欄の数値
  S2:第2種ホルムアルデヒド発散建築材料の使用面積
  S3:第3種ホルムアルデヒド発散建築材料の使用面積
  A :居室の床面積
居室の種類 換気 (一) (二)
住宅等の居室(※1) 0.7回/h以上(※2) 1.2 0.20
その他(0.5回/h以上0.7回/h未満)(※2) 2.8 0.50
住宅等の居室以外の居室 0.7回/h以上(※2)
0.88 0.15
0.5回/h以上0.7回/h未満(※2) 1.4 0.25
その他(0.3回/h以上0.5回/h未満)(※2) 3.0 0.50

※1 住宅等の居室とは、住宅の居室、下宿の宿泊室、寄宿舎の寝室、家具その他これに類する物品の販売業を営む店舗の売場をいう。
※2 換気について、表に示す換気回数の機械換気設備を設けた場合と同等以上の換気が確保されるものとして国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの〔告示の第1(0.7回/h相当)、第2各号(0.5回/h相当)、第3(0.3回/h相当)〕又は国土交通大臣の認定を受けたものを含む。

-4- 適用除外
以下の居室は、別途の基準等により判断するため、内装の仕上げの制限について適用除外。
一定の基準(令第20条の6第1項第1号ハ)に適合する中央管理方式の空気調和設備を設ける居室(令第20条の5第5項)
1年を通じて、居室内の人が通常活動することが想定される空間のホルムアルデヒドの濃度を0.1mg/m3以下に保つことができるものとして国土交通大臣の認定を受けた居室(注:換気設備の基準も適用除外。)(令第20条の7)

(2) 換気設備の設置の義務付け(令第20条の6) 



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1.2 国土交通省告示関連

1) 第1種ホルムアルデヒド発散建築材料(国土交通省告示第1113号)
建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第20条の5第1項第3号の規定に基づき、第一種ホルムアルデヒド発散建築材料を次のように定める。
 第一種ホルムアルデヒド発散建築材料を定める件
建築基準法施行令第20条の5第1項第3号に規定する夏季においてその表面積1平方メートルにつき毎時0.12ミリグラムを超える量のホルムアルデヒドを発散するものとして国土交通大臣が定める建築材料は、次に定めるもののうち、建築物に用いられた状態で5年以上経過しているものを除くものとする。


一 次に掲げる建築材料

合板(略)
木質系フローリング(略)
構造用パネル(略)
集成材(略)
パーティクルボード(略)
ミディアムデンシティファイバーボード(略)
パーティクルボード(略)
木材のひき板、単板又は小片その他これに類するものをユリア樹脂、メラミン樹脂、
フェノール樹脂、レゾルシノール樹脂又はホルムアルデヒド系防腐剤を使用した接着
剤により面的に接着し、板状に成型したもの(略)
ユリア樹脂板
壁紙(略)
次に掲げる接着剤(略)
次に掲げる保温材(略)
次に掲げる緩衝材(略)
次に掲げる断熱材(略)

ニ 次に掲げる建築材料(施工時に塗布される場合に限る)
次に掲げる塗料(略)
(1) アルミニウムペイント(略)
(2) 油性調合ペイント(略)
(3) 合成樹脂調合ペイント(略)
(4) フタル酸樹脂ワニス(略)
(5) フタル酸樹脂エナメル(略)
(6) 油性系下地塗料(略)
(7) 一般用さび止めペイント(略)
(8) 多彩模様塗料(略)
(9) 家庭用屋内木床塗料(略)
(10) 家庭用木部金属部塗料(略)
(11) 建物用床塗料(略)
次に掲げる仕上塗材(ユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、レゾルシノール樹脂又はホルムアルデヒド系防腐剤を使用したものに限る。)
(1) 内装合成樹脂エマルション系薄付け仕上塗材
(2) 内装合成樹脂エマルション系厚付け仕上塗材
(3) 軽量骨材仕上塗材
(4) 合成樹脂エマルション系複層仕上塗材
(5) 防水形合成樹脂エマルション系複層仕上塗材
次に掲げる接着剤(略)




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1.3 JIS A 6909-2003関連

1) 品質規定の追加
内装用の仕上塗材には、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、レゾルシノール樹
脂及びホルムアルデヒド系防腐剤のいずれをも使用してはならない。
2) 表示の追加
内装用の仕上塗材で、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、レゾルシノール樹脂及びホルムアルデヒド系防腐剤のいずれをも使用していないものは、ホルムアルデヒド放散による区分の記号(F☆☆☆☆)を表示する。





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1.4 建築用仕上塗材と関連法規との係り
区分
ホルムアルデヒド発散速度
仕上塗材の種類
JIS A 6909での放散等級表示
居室への仕上げの制限
第1種ホルムアルデヒド発散建築材料 0.12mg/m2h超 内装薄塗材E
内装厚塗材E
軽量塗材
複層塗材E
防水形複層塗材E
のうちユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、レゾルシノール樹脂又はホルムアルデヒド系防腐剤を使用したもの
第2種ホルムアルデヒド発散建築材料注1) 0.02mg/m2h超
0.12mg/m
2h以下
面積制限
第3種ホルムアルデヒド発散建築材料注1) 0.005mg/m2h超
0.02mg/m
2h以下
面積制限
な し注1) 0.005mg/m2h以下 内装薄塗材E
内装厚塗材E
軽量塗材
複層塗材E
防水形複層塗材E
のうちユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、レゾルシノール樹脂及びホルムアルデヒド系防腐剤を使用していないもの
F☆☆☆☆ 制限なし
上記5種類以外の内装用の仕上塗材
注1)別途国土交通大臣認定制度により、第2種、第3種又は規制対象外とみなす大臣認定書により運用可能。

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2.ホルムアルデヒド放散等級の自主表示とは

 建築用仕上塗材のうち、次の5品目でユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、レゾルシノール樹脂又はホルムアルデヒド系防腐剤を使用したものは国土交通省告示第1113号により第1種ホルムアルデヒド発散建築材料とされています。
(1)内装合成樹脂エマルション系薄付け仕上塗材(内装薄塗材E)
(2)内装合成樹脂エマルション系厚付け仕上塗材(内装厚塗材E)
(3)軽量骨材仕上塗材(軽量塗材)
(4)合成樹脂エマルション系複層仕上塗材(複層塗材E)
(5)防水形合成樹脂エマルション系複層仕上塗材(防水形複層塗材E)
 したがって、これらの塗材は建築基準法施行令によって定められている居室に平成15年7月1日から使用できなくなります。
 ただし、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、レゾルシノール樹脂及びホルムアルデヒド系防腐剤のいずれをも使用していない製品は告示から除外されていますので、建築基準法の適用を受けず面積制限なく居室に用いることができます。
この場合、図2.1に示すようにJIS A 6909-2003に基づくJIS表示製品は、「内装用の仕上塗材には、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、レゾルシノール樹脂及びホルムアルデヒド系防腐剤のいずれをも使用してはならない。」とするJISの品質規定に適合していることになりますので、建築基準法の適用を受けません。
 また、JIS A 6909-2003に基づくJIS表示製品にはJISの規定により必ずホルムアルデヒド放散等級としてF☆☆☆☆マークも表示され、包装・容器等で建築関係者や消費者が確認することができます。
 しかし、JIS表示のない製品にはF☆☆☆☆マークの表示ができませんので、日本建築仕上材工業会では、ホルムアルデヒド放散等級自主表示規定に基づき「ユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、レゾルシノール樹脂及びホルムアルデヒド系防腐剤のいずれをも使用していない製品」に、ホルムアルデヒド放散等級としてF☆☆☆☆マークを自主的に表示する制度を発足しました。
 このような自主表示は、当工業会ばかりでなく(社)日本建材産業協会、日本繊維板工業会、全国天然木化粧合単板工業協同組合連合会、日本プリント・カラー合板工業組合、全国木材組合連合会、日本フローリング工業会、日本複合床板工業会、日本防音床材工業会、日本壁装協会、日本接着剤工業会、(社)日本塗料工業会等でも行われており、建築基準法では国土交通大臣認定による表示やJISによる表示と同様に運用されます。
なお、建築基準法、建築基準法施行令及び国土交通省告示では「発散」という用語が用いられ、JISでは「放散」という用語が用いられています。これらは実用上同義語ですが、本自主表示制度ではJISを基本として審査・登録を行いますので、表示にあたっては「放散」という用語を用いることとしました。また、前述の(1)〜(5)以外の建築用仕上塗材については、告示での対象とされていませんので、建築基準法の適用をうけることなく居室に面積制限なく使用することができます。

図2.1 ホルムアルデヒド放散等級自主表示とJIS及び建築基準法関係法令等との係り


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